プログラム紹介・募集要項

亀田総合病院 心療内科・精神科専門医研修プログラム

1.プログラム紹介と教育ポリシー

精神神経科病棟は2005年7月19日に新規に開設され運用を開始し、現在8年目に入っている。閉鎖病棟で稼動病床数は41床(内保護室4床)である。病棟部門を加えることで当科の診療体制は飛躍的に強化され、スタッフが経験を深めていく中でその存在感はいよいよ増してきた。2006年4月からは千葉県から指定病院(指定病床4床)の認定を受け措置入院の受け入れが可能となり、更に8月からは応急入院指定病院となり県の精神科医療の中核的な施設の一つとして認知され期待も大きい。

ちなみに2011年4月1日から2012年3月31日までの直近一年間の診療実績は以下のごとくである。総入院患者数232名(一般科病棟での入院患者12名を加えると244名)、平均在院日数は47.1日となった。男女比は男性64名(28%)、女性168名(72%)と女性が多い。疾患別ではF3(気分障害)が最も多く100名(43%)を占め、以下F2(統合失調症圏)62名(27%)、F4(神経症性障害)40名(17%)と続いているが、総合病院としての特性を反映して脳器質性精神障害も多く、広汎性発達障害などの発達障害や摂食障害も含め多種多様な疾患の方が入院してきている。入院年齢別では30才台が55名(24%)と最も多く以下50歳台が40名(17%)、40歳台36人(16%)と続く。また19歳以下の入院は7人(3%)で、80歳以上の18名(8%)も含めてあらゆる年齢層の患者様がさほどの偏りなく入院してきている傾向は従来と変わりないが全体的に年齢層が高くなってきている。
入院形態別では医療保護入院101名(44%)、措置入院2名(1%)、任意入院129名(56%)となり、これまでと比較して非自発入院の割合が増加している。入院経路を見ると救急外来を経した入院は43名(18%)を占めている。院内他科からの入院も42名(18%)と増加しているが、仔細にその内容を検討すると患者の精神症状や身体症状の程度に合わせた病棟選択がなされており、近隣の精神科病院からの重傷身体合併症患者の受け入れ要請も合せれば、院内や地域との連携を深めながら診療活動を行えていることが示されていると思われる。
精神科救急の重視とも併せて二次診療圏での中核病院として十分な機能を果たせる様になっており、当科の南房総地区における必要性と重要性は揺るぎないものとなったと考えられる。
又当院では有床総合病院精神科の役割として従来言われてきた「精神科急性期治療と合併症治療」という役割に加え、総合病院の診療活動の多様化と高度化にあわせて新たに生じる精神科へのニーズに対応すべく臨床心理室(現在常勤4名)を拡充し、乳腺科や不妊生殖センター及びエイズ患者の治療支援チームの一員として機能させると同時に精神科との連携を深め、更に脊椎脊外科の患者さんへの心理的サポートにも関わる試みも始めており、また2008年4月からは緩和ケア領域にも積極的に関ってきた。医療の高度化、細分化に伴い不可避的に発生する精神科的諸問題に柔軟に対応することがこの体制の目指すものである。

外来患者は亀田クリニック外来及び救急救命センター外来で受け入れているが、対象患者数は118人/日(2011年度実績)にのぼり、疾患としては入院患者に比較して気分障害や神経症性障害の方が多い。病棟からのコンサルテーション・リエゾン依頼件数は約2件/日であった。

2012年5月時点でのスタッフ構成は常勤医5名(内指定医5名)、シニア・レジデント1名からなるが、常勤臨床心理士4名やPSW3名の存在も加え治療スタッフは充実し精神科チーム医療のより一層の充実が期待できる。

またパルス波治療器を用いての修正電気けいれん療法も当院麻酔科の協力の下で施行を開始し経験を重ねており、治療手段としての必要性を厳密に判定し治療実績を挙げている。将来的には他の精神科病院やクリニックとの連携の上でECT治療のセンター的役割を果たすことを目指している。
 さて亀田総合病院の精神科治療システムの基本的理念は下記のようになる。南房総地区における精神科救急体制の一翼を担うと共に、精神科の合併症患者の受け入れを他科の協力を得て積極的に進めていく。また、当初より地域における精神疾患患者の包括的生活支援の考え方を組み入れ、少ない入院日数で最大限の治療効果を上げることを目指す。そのために多職種によるチーム・アプローチを基本的な治療原則とすると共に、当院の在宅医療部が築き上げてきたノウハウを積極的に活用していく道を探るというのがその基本である。中核にある精神科病棟運用の基本理念としてはAlliance(連携)、Flexibility(柔軟性)、Local & Global(地域に根ざした医療を国際的な視野のなかで)、Base of the Task force(機動戦力の基地:地域に開かれた多職種からなるチーム医療の拠点)を掲げているが、最近はどの理念も欠かせないことを改めて痛感している。

また、チーム医療の質を担保するための当科独自の方法として、毎週木曜に一週間の入院患者のカンファレンスを全ての職種合同で行っているが、各職種の意見が飛び交い貴重な研鑚の場となっている。また2009年に入ってから毎週火曜に医師・看護師・臨床心理士・精神保健福祉士からなる多職種リエゾンカンファレンスを行っており、リエゾン診療の中で不可避的に起こってくる複雑な問題により機動的な対応を行えるようにしている。リエゾン医療におけるチーム医療を推進し質の高いものにし、更には地域医療との有機的結合を計ることがが目標であり、全国的にも注目される活動を行っている。リエゾンカンファレンスは医師独自のものも別個に行っており、治療の質の一貫性の確保につながっている。

当科での上記のような理念に基づいた研修により、精神科救急への対応から在宅での包括的生活支援システムへの即応能力までを身に付けた、時代と社会の要請にこたえうる精神科医の養成を目指すことが可能となると思われる。具体的なプログラムとしては次のようになる。

2.プログラム年数

3年

3.後期研修プログラム概要

1年次

統合失調症などの精神病性障害、気分障害、神経症性障害、器質・症状性精神障害などの幅広い入院症例を担当しながら、一定期間を経てから外来を週1回担当する。また、他科からの要請に応じてリエゾン精神医学の基本を身につけると共に救命救急センターでの臨床活動などを通じて精神科救急への対応能力を身につける。学会発表も症例報告を中心に積極的に行っていく。昨年実績からはこの一年で精神科指定医取得に必要な8症例すべてを経験できると思われる。

2年次

1年次の臨床的活動を深化継続すると共に外来を週2回に増やし、ジュニア・レジデントへの指導も併せて行う。この年次で包括的地域生活支援の基本的考え方を身につける。伝達可能な治療技法を重視し、また、関心を抱く精神科領域の治療技法、例えば認知行動療法などに関しては連携を持つ千葉大学医学部精神科などと協力して研修を行う。
随時、他の研修施設での研修、例えば国立精神保健研究所薬物依存研究部での薬物依存関連の短期集中研修などにも積極的に参加してもらっている。

3年次

2年次までの活動の質的向上を図ると共に、対外的研究発表を積極的に行っていく。また後半には精神科領域では今や必須の資格である精神保健指定医の資格取得のためのレポート作成の準備にはいると共に精神神経学会専門医認定試験の準備もあわせて行なう(2006年度から精神科専門医制度がスタートしたが、当院も専門医研修施設として認定された。指導医として小石川比良来、能重和正の2名が学会の認定を受けている。更に言えば、部長である小石川比良来は精神保健指定医審査部会の一員であり、的確な指定医レポート作成の指導を行うことができる)。更に当院独自のプログラムとして後期研修3年間の間に希望者には一定程度の期間、海外で先進的な精神医療を展開している国(例えばオーストラリアやカナダ)で研修を積むプログラムを組み入れ視野の広い専門医の養成に役立てる試みを行っている。尚2012年6月現在では、当院で初期研修と後期研修一年間を終了した澤滋がカナダ・バンクーバー総合病院でクリニカル・フェローとして貴重な研鑽を積んで来た後、現在当院で常勤医として勤務している。また本人の希望に応じて関連する他の診療科(例えば在宅診療部や神経内科)での研修も可能である。

文責者:心療内科・精神科部長 小石川 比良来

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