医学生の皆さんへ
安房レジの日々
初期研修医 地域ジェネラリストプログラム 後藤 初菜

医学生の皆さん、初めまして。初期研修医地域ジェネラリストプログラム(通称安房レジ)の後藤初菜と申します。
安房地域医療センターでの研修を中心とする当プログラムで一年間働き、率直に皆さんにお伝えしたいのは、ここでの人の温かさや相談のしやすさ、です。医学生の皆さんとしても、重視したいけれど、一日の病院見学では掴めず、実際のところ働いてみないとわからない要素なのではないでしょうか。それを少しでも皆さんがイメージしやすいように、私が経験したせわしなくも楽しい日々を、ありのままに綴ってみようと思いました。もちろんジェネラリストを育てるプログラム自体の質の高さについても力説できる自信はあるのですが、それは説明会や見学でお会いした時でもお話ししやすいので、別の機会に。

「胸を張って「安房レジです」と言えるようになること」。
4月、総合診療科ローテだった私が、指導医の先生と一緒に、初めて設定した「目標」のうちの一つです。どんな医師になりたいか、総合診療科の2ヶ月で何を学び達成するか、そのために何をするか。発熱の身体診察ができるようになる、静脈採血40回成功する、看護師さんの名前を覚える、などなど、長期的なものからローテ中のものまで。そんな中で、1年後の目標として設定したものが冒頭のものです。これには、いくつかの意味が込められていました。優秀で人柄も素敵な安房レジの先輩方へ少しでも近づきたいという尊敬の念、胸を張れるくらい努力せよという自分への枷、そして、一番は、温かな安房ファミリーの一員に早くなりたいという願いです。
安房の医局には温かい空気が漂っていました。これは病院見学に来ていた頃から肌で感じていたものです。例えば、朝のカンファレンスは、当直をしていた方々を労う拍手から始まります。また、見学生を案内してくださる事務の方は、私が当時足の手術をした直後で、実は少し歩きが不自由だったことを見抜いて気遣ってくださったり、天候が悪かったその日、私が無事に帰れるよう時間に配慮してくださったり。そんなふうに、常に誰かが誰かのことを想いやっていることを感じられる場所でした。そんな中で私の医師人生はゆったりとスタートしたのです。

勤務初日は患者さんが1人だけ割り振られました。自分のPHSに電話がかかってきて、患者さん一人を任せられる、緊張感と責任感と誇らしさ。私の初めての患者さんは足の蜂窩織炎で入院となった高齢女性でした。「抗菌薬は何をどれくらい使えばいいのか?」「腎機能は?」「リハビリはどれくらい進んでいるのだろう」「どんなお食事が合うのだろう」「今日は熱が下がってきたみたいでよかった」こんなことを思いながら、患者さんと話し、指導医の先生と方針を立て、看護師さんやPT(理学療法士)さんやST(作業療法士)さんに患者さんの様子を伺い、食事やリハビリの様子を見に行き、SW(ソーシャルワーカー)さんやご家族と退院後のことを議論し、Up To Dateや書籍で調べごとをしてまとめて、という日々を繰り返すようになります。
最初は点滴のオーダー一つすらできない状態です。そんなところから一つ一つ丁寧に教え、一緒に患者さんを診て、手技のチャンスを与えてくださる先生方。中には、空き時間にはレクチャーをしてくださったり、ローテ終わりには振り返りまでしっかりしてくださったりする先生もいらっしゃいました。また、同じ科の先生方だけでなく、それ以外にもメンターの先生や、他の科の先生や他職種の方までもが、気にかけてくださっていました。そのため、もらってばかりではなく、自分でも何か提供したい、少しでも対等になりたい、と思ったことが、仕事・勉強に対するモチベーションになっていました。もちろん、時には厳しい言葉で叱られ無力感に苛まれたり、実力に見合わないことを求められている気がして頭が真っ白になったり、指導医の先生と意見がぶつかったり、という場面もありました。また、手厚い教育に見合った成長をしなければというプレッシャーも勝手に感じていました。しかし、それでも挫けずにいられたのは、そんな先生方の温かさを信頼できていたからだと思います。
初めてのプレゼンで何回も練習したのに、本番では声が震えて悔しい思いをしたり。保存したつもりのカルテが全部消え、泣きながら指導医の先生にご馳走してもらった牛丼を食べたり。「亀レジはもうそんなにたくさんの患者さんを持っているのか」なんて焦りながらも一緒に海を見て和んだり。いつも必死でしたが、大変という感情はなく、楽しさを感じられる毎日だったのは、ここでの皆さんの温かさに包まれていたからだと思います。

冒頭の目標、掲げた際は、正直、達成するための「目標」というよりは「憧れ」のようなものだと考えていました。しかし今一年を振り返り、4月に後輩たちに出会う場面を想像すると、先生方がそうしてくださったように、きっと私は「安房レジ」側として迎え入れることができるのだろうな、とポジティブな気持ちでいます。必死に目まぐるしい毎日を送ってきただけですが、いつの間にか自分にこんな変化が起きるほど、先生方や院内の方々、患者さんからたくさんの愛を注がれ、私自身もそれに応えられるように努力したいと思える環境が安房にはあるのだと、改めて最後にお伝えできます。
そんな愛され研修医になるための一歩をぜひ、医学生の皆さんが踏み出せるよう願っております。

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